Q&A(よくいただく質問)
監修: |
横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科・リハビリテーション部 根本明宜先生 |
ITB療法に関するご質問を下記にまとめましたので、ご参考にして下さい。
ご注意:これらの質問と回答は現在発売されているシンクメッドUポンプを対象に作成されています。
機 器
- ポンプはどのような形ですか?
- ポンプの写真を紹介します。
- ポンプの大きさと重さはどの位ですか?
- 一般に使われるポンプでは、ポンプ本体から一部出っ張った部分まで含めた長さが8.75cm、ポンプ本体のみでは7.4cm、厚さは1.95cmです。ポンプの中にあるお薬の量で変わりますが重さは165〜185gです。
- カテーテルはどのようなものですか?
- カテーテルはお薬の出る髄腔とポンプをつなぐ柔らかく細い管です。髄腔の中にあり先端の近くにお薬の出る6つの穴を持つ脊髄側カテーテルとポンプに接続されるポンプ側カテーテルを2本つないで使います。カテーテルの太さはどちらも1.2mmです。体の大きさやお薬を投与する場所によって長さを調節して使用します。
カテーテル写真を紹介します。
- ポンプの電池寿命はどの位ですか?
- お薬の投与量によって異なりますが通常5〜7年です。
- ポンプとカテーテルを交換するのはどのような場合ですか?
- ポンプの電池の状態をプログラマで調べ、電池切れが近付いた時点で交換になります。ポンプとカテーテルにトラブルが起きた時にも交換されることがあります。ポンプを交換してもカテーテルはそのまま使い続けることもあります。
日常生活
- 旅行は出来ますか?
- はい。ただし、お薬の交換を正しく行うために主治医の先生にスケジュールを連絡しておく必要があります。旅行先には患者手帳と緊急連絡カードを持参して、何か起きたときには連絡が取れるようにしてください。
- ポンプは空港の検査などの金属探知機に反応しますか?
- はい。係官に患者手帳を見せて体内にポンプがあることを説明してください。
- 登山や飛行機は大丈夫ですか?
- 周りの気圧が低くなるとお薬をポンプから出すガスの圧力が高くなりプログラムした量より投与されるお薬の量は少し多くなります。2,400mまでの高さの山であれば影響は大きくありません。飛行機は気圧がコントロールされているので問題はありません。
- 温泉などの熱いお風呂に入るのは大丈夫ですか?
- ポンプが熱せられるとお薬をポンプから出すガスの圧力が高くなりプログラムした量より投与されるお薬の量は多くなります。米国では湯温が39度未満なら大丈夫とされてます。すごく高い温度のお風呂に長くつからなければ問題はありません。
- スキューバダイビングは大丈夫ですか?
- 周囲の水圧が高くなるとお薬を投与するガスの圧力が低くなりプログラムした量より投与されるお薬の量は少なくなります。また、高い水圧がポンプにダメージを与えることもあります。水深10m未満まではあまり影響はありません。
- ポンプから音が鳴りますか?
- ポンプを植込んだ状態では必ずしも気付く様な音は鳴りません。アラームについては主治医の先生に一度聞かせてもらい、対応について確認してください。
治 療
- ITBで病気が治りますか?
- ITBはいくつかある痙縮を軽くする治療法のひとつです。以前はできなかった活動ができたり、邪魔をしていた余計な動きが出にくくなります。痙縮の原因となっている病気(原因疾患と呼びます。)はITBでは治すことが出来ません。また、残念ですが、原因疾患は現在の医学では治せないものがほとんどなので、病気と付き合って前向きに生きる気持ちが大切です。
- ITBを始めた後に歩きにくくなることがありますか?
- 筋力が強い場合は早く歩ける、あるいはスムーズに歩けるうようになるとの報告があります。筋力が弱く、痙縮によって弱い筋肉が支えられている場合には、歩きにくくなることがあります。ITBによって痙縮を減らしたたために弱い筋肉で体を支えなければならないからです。この場合はリハビリテーションで筋力を強くする必要があります。装具を調整して歩きやすくなることもあります。
- 体の小さい小児はITBを受けられますか?
- 海外では多くの脳性麻痺の小児の患者さんがITBでの治療を受けています。わが国でも小児では3歳児(身長110cm、9kg)での治療経験がありますが、ポンプを植え込む十分なスペースがあることが条件ですので、主治医の先生にご相談ください。また、小児の場合は患者さんに異常がないか常に注意する、あるいはお薬の交換のため定期的に病院に通うのを助けることが必要であるため、家族や介護者の方を含めた周りの環境が重要になります。
安全な使用のための注意
- 機器のトラブルにはどのようなものがありますか?
- 一番多いのはカテーテルが髄腔からの移動、折れ曲りなど、カテーテルに関するトラブルです。体内に機器を植え込むので感染が起きることもあります。残念ですが、トラブルはある程度起きてしまいますので、トラブルが起きた時の対応方法を想定して準備しておくことが大切になります。
- 機器にトラブルが発生するとどのようなことが起きますか?
- 一番心配しなければならないのは、機器のトラブルなどでお薬の投与が止まることによって、単に効果が消えるだけではなく他の重い症状が発生することがあります。これを離脱症状と呼びます。海外では離脱症状による重篤例の報告もありますので注意が必要です。その前触れは「痙縮の急な悪化」、「かゆみ」、および「精神状態の変化」です。機器のトラブルは体外からはわからないので、これらの症状が出た場合には直ちに主治医の先生に連絡を取って処置を受けてください。
- 離脱症状以外に注意することがありますか?
- お薬の投与量が必要量よりずっと多い状態(過量投与と呼びます)あるいはずっと少ない状態(過少投与と呼びます)となった場合にも注意する必要があります。過量投与の場合は、「体に力が入らない」、「眠い」、「だるい」、あるいは「呼吸が苦しい」ことがあります。過少投与の場合は痙縮がかなり悪化します。これらの症状が出た場合にも主治医の先生に連絡を取って処置を受けてください。
- アラームが鳴った時はどうするべきですか?
- アラームには直ぐに対応しなければならないものと、それほど急ぐ必要のないものの2種類があります。直ぐに対応しなければならないアラームはポンプが止まってお薬が髄腔に行かなくなるなどの場合に鳴ります。それほど急ぐ必要のないアラームはもうしばらくするとポンプにお薬がなくなるなどの場合に鳴ります。どちらの場合も直ぐに主治医の先生に連絡してください。ポンプはおなかの中にあるので音は大きくありません。また他の音と間違うことがあります。このサイトの「アラーム音」で音の種類を試聴してみてください。
アラーム音の試聴
- 必ず3ヶ月以内に通院しなければいけませんか?
- はい。体内にあるポンプの中のお薬が食べ物の賞味期限のように正しい状態に保たれている期間が3ヶ月以内であるため、お薬を3ヶ月以内に交換する必要があります。
手 技
- スクリーニングとは何ですか?
- ポンプとカテーテルを植え込む前に腰の部分にお薬を髄腔に投与して、痙縮が軽くなるかを確認する方法をスクリーニングと呼びます。お薬の効果が消えて元に戻るまで入院して行います。スクリーニングでは痙縮が取れ過ぎてびっくりする、あるいは歩きにくくなることがあります。このような場合よくあるのはお薬の量が多過ぎて効き過ぎることです。植込みの後はお薬の量を細かく調整して状態に合った量が投与されるので、あまり心配することはありません。
- 手術時間はどの位ですか?
- 普通は2〜3時間になります。
- 入院期間はどの位ですか?
- 以下はだいたいの目安です。
スクリーニングは1〜2日です。初回のポンプとカテーテルの植え込み手術は、お薬の量の調整や植え込み後のリハビリテーションの追加があり約1ヶ月間、ポンプ交換の場合は3〜7日間になります。
その他
- 国や地方自治体による費用の支援を受けられますか?
- 痙縮の原因疾患には、国が難病(「特定疾患」)に指定し医療費の大半を国が支払う制度の対象になるものが多くあります。
(難病情報センターのサイト:http://www.nanbyou.or.jp/)
障害の認定を受けている(手帳を持っている)場合は通常の医療費と同様の支援があります。障害の程度や自治体の制度によって異なりますので、地方自治体の障害担当窓口(福祉課など)に問い合わせてください。
- ITBはどこで受けられますか?
- ITBを実施する先生は講習会を受け技術をマスターした専門の先生に限られます。それらの先生が勤務している病院はこのサイトの「実施医療機関」で見ることができます。